2010年9月29日14:00-15:00、Forum Hallにてプレナリー “Next Generation Visions for Space Operations” が開催され、パネリストの一人として登壇しました。大学院生やまだ社会人になって間もない若手が、将来の宇宙開発で貢献したいことをNASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(欧州宇宙機関)のトップに伝えました。このプレナリーを実現してくださったのは、国際宇宙航行連盟(IAF:International Astronautical Federation)のYoung Professionals Programme Committee 、The Space Education and Outreach Committee (SEOC) 、Space Operations Committee の3団体です。
パネリストとして登壇が決まった時、私の最初の疑問は「Space Operationsって何?」でした。説明は次のようなものでした。
「宇宙システムのなかで“オペレーション(operation)”は、システムのライフサイクルのなかでも最も目立つ段階。航空宇宙産業ではこの段階が、未来の働き手の意欲を高め、鼓舞する。歴史の授業で子供たちが触れたり、報道で見たり、有名なフィクション小説で読んだり、映画で見たりするのはこのオペレーションの部分。オペレーションに魅了された若い人たちを未来の産業の担い手として引き入れることがとても大切だと認識されている。航空宇宙産業を持続させるため、トップが若手の希望や期待を聞く機会は必要不可欠。」
登壇者は以下のメンバーでした。パネリストは2回のYouTube選考で選抜されました。第1回目が30秒、第2回目が3分のビデオ製作でした。
モデレーター(1)William Gerstenmaier:Associate Administrator for Space Operations NASA, United States
モデレーター(2)Manfred Warhaut:Head of Mission Operations European Space Agency
パネリスト(1)Alex Karl:Operations Engineer, Space Applications Services, Belgium
パネリスト(2)Ryan Kobrick:Executive Director Yuri’s Night, Canada
パネリスト(3)Tahir Merali:Columbus Systems Training Group European Astronaut Centre, Astrium Space Transportation, Germany
パネリスト(4)Brian Leathers:Safety Engineer Kennedy Space Center, United Space Alliance, United States
パネリスト(5)Aria Iwasawa:Graduate Student Keio University, Japan
舞台裏を少しご紹介。現地プラハに入る前、意識合わせのためにパネリストと3回(8月5日、8月26日、9月10日)遠隔会議を実施。3日前に顔合わせ、前日に会場確認、当日はお昼をご一緒するという流れを踏んでプレナリーを迎えました。さらに、考えておいてもらいたいテーマとして、以下の質問が共有されていました。本格的なディベートができる内容です。
Why (or why not) are deep space probes necessary precursors for human exploration? (有人宇宙探査の前に深宇宙探査機での探検が必要または必要でないと思う理由はなぜですか?)
What should be the next major area of emphasis for unmanned space operations?(無人の宇宙開発で次に重点的に取り組むべき分野は何だと思いますか?)
When did you decide on a career in space operations and why?(あなたが宇宙産業のキャリアを選択したのはいつですか?なぜですか?)
What experiments or facilities are needed in the future – both manned and unmanned?(有人無人に関わらず、将来の宇宙開発で必要な実験や施設は何だと思いますか?)
Moon or Mars? Operationally, can we do either soon?(月か火星か?オペレーションでは、どちらか近いうちに実現できると思いますか?)
There are constant stories regarding the need to get young people more engaged in space programs. How would you encourage them?(若い人に宇宙開発に興味を持ってもらう必要があるということが頻繁に語られます。あなたはどのようにして彼らに希望を与えますか?)
We have much more experience with unmanned space activity (probes, observation, mapping, robotic exploration), than manned missions. What are the operational challenges for these?(有人のミッションより、無人での宇宙活動[探査機、観測、マッピング、ロボット探査]の方がはるかに多い実績があります。これらのオペレーションのチャレンジは何だと思いますか?)
People tend to be either human spaceflight advocates or unmanned/robotic mission supporters. Why?(人は有人宇宙開発または無人探査機/ロボットミッションのどちらかを熱心に唱えるサポーターに分かれる傾向があります。なぜだと思いますか?)
The romantic talk about the need for autonomy for the crews in human space flight. The counter argument is that real time control provides safety and improved productivity. What is your view?(有人宇宙飛行で搭乗員が自律的に活動できる必要性があるとの甘いささやきが存在する一方で、リアルタイムコントロールの方が安全性と生産性を高めると主張する人もいます。あなたはどう思いますか?)
結局、本番のプレナリーでは聞かれませんでしたが、私に控えている質問がありました。それは、「あなたはシステムズエンジニアリングを学んでいます。大きなマシンのなかでは迷子になってしまうことが多くあります。あなたは大きなシステムのなかで、どのように貢献したいですか?」というものでした。
宇宙機は何万ものパーツで構成され、時に何百人、何千人、何万人もの力が結集されて製造されている大規模複雑システムです。私が当時考えていたことは、大きなマシンをさらに大きくし、次世代にも受け継げるよう教育に力を入れるということでした。宇宙開発の目標は政治、経済、時代に左右され、どうしても時間が掛かかってしまいます。時に一世代で夢を実現することは難しいので、どんどん夢を次世代にバトンタッチしていく必要があると考えています。
周りの大先輩方に少しでも追いつきたい!私、がんばらなきゃ!という気持ちにさせてくれた奇跡のような時間でした。